危険負担は、双務契約において、一方の債務が履行不能になったときに、債権者は反対債務の履行を拒むことができるかという問題を扱っています。
たとえば、建物の売買契約において、建物が契約締結後に(両者どっちも悪くない=双方の責めに帰することができない)火災によって滅失した場合、建物引渡債務は履行不能になりました。このときに、債権者(建物の買主)は反対債務(建物の代金支払債務)の履行を拒むことができるかが問題となります。
論理的には、拒むことができるとの処理も、拒むことができないとの処理も可能ですが、民法536条1項は、このような場合には債権者は反対債務の履行を拒絶できると規定しています。
民法536条1項は、債権者は反対債務の「履行を拒絶」できると定めただけであって、反対債務は消滅していません。反対債務から永遠に自由になりたければ、債権者は、履行不能を理由として契約を解除する必要があります(民法542条1項1号)。